ハイスペックガール








……ここ?







なんとも田舎な風景で、田園が広がっていた。


「こんな所に病院があるの?」


浩太は少し考えてから、あぁと何かを納得したように呟いた。


「凛が想像してるような病院じゃねぇけどな」


「へぇ。」



今日は驚かされてばっかりだな。暴走族ってチャラチャラしてて馬鹿なイメージが勝手にできてしまっていた。


繁華街の連中はみんなそうだったから。





……偏見だったみたい。




「ここだ。」


マキは私の方を見ながら少し古い家を指差した。



そういうことね。きっとこれもバレないようにしている工夫なんだろうな。



「どうぞ、中へ」


体格のいい男の人が私たちに入るよう促した。

たしか……南里って呼ばれていたような。




「うわぁ……」


思わずため息がこぼれた。


温度、湿度がすべて丁度よく保たれている環境だった。



ここにもやっぱり地下があるようで階段が2箇所あった。



「マキ…?」


私と同様に総長を呼び捨てした人がいた。

歩いてくる1人の老人。


白い髪に剃られていない白い髭。それでも清潔感があった。



「久しぶりだな。」


マキは親しげにその老人と笑顔でハグを交わした。


誰だろう……。


そんなことを考えながら老人をぼーっと見つめていると、目が合ってしまった。



吸い込まれそうな目に、すべてを悟られているように錯覚する。



「あなたですか、海音凛という少女は……」


「はい。」と目を逸らせないまま答えた。その後、

「あなたは…?」と付け足した。



老人はにっこり微笑み、マキを見た。

マキは軽く微笑み返したあと、私に言った。



「俺の祖父。」


「あぁ、マキの…」



たしかに、よくみると吊り上っているのにどこか穏やかな目はそっくりだな。


性格は置いといて…の話だけど。



「なんと呼んでくれても構わんが…」


老人は整った白い髭を上から下へ撫でた。


「俺たちはライさんと呼んでる。」


横から浩太に、ライさんと呼べって目で訴えられている…気がする。


「ライさん…で。」


名前がライ??

よく分からないからそれでいいや。


ライさんは私をもう一度見つめた後、瞬きをするのと同時に頷いた。




「それで、マキ。どうしてこの子をここへ?」


え、事情しらないの?

でもまぁ、最近のことだし、あの場所から結構離れてるっぽいから知らなくて当然か。


その時、私の右足の親指の付け根に激痛が走った。


なんとか声を出すのをこらえることができた。


多分、靴擦れだよね。



「立ち話もなんだから、あの部屋へ。」



ライさんは私のことを察してか、優しく微笑んだ。




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