ハイスペックガール
マキが真剣な顔つきになると、その場の空気がガラッと変わる。
緊張感が漂う。
言うことをためらってる…?
なかなかマキの口は開かない。
この間がなんだかもどかしくて、耐えられなくなる。
別にためらうことなんかないのに。
私はついに、口を開いた。
「ち…」
「治癒能力を持っているんだ。」
言葉を被せられて不快感を覚える。
自分で勝手に口を挟んだんだけどね。
「なんだと?」
耳が遠いのかな。
やっぱり老人だから。
でもそれはすぐに間違いだと気づく。
険しい顔つきで、なんだか信じたくないような……。
そんな雰囲気があった。
「治癒能力がある。」
マキは念を押すようにもう一度言った。
マキのその真剣さをみて、ライさんは信じたのか、少し考えた。
治癒能力についてなにか知ってるのかな?
すると突然、ライさんの体が私に向いた。
「治癒能力を持っている……んですね?」
敬語を使われているのは何か理由があるんだと思う。
「はい。」
わたしはそれだけ答えて、体をライさんに向ける。
これくらいの礼儀はわかる。
「っっ!……同じように治癒能力を持つ人がいました。」
え?!いたの?!でも…過去形?
「その人は、神藤やい。若くて美しい女性でした……。
みんな彼女にお願いしたのです。
病気を治してくれ、と。
彼女は期待に応えるように次々と病人を治していきました。
けれど、……突然、姿を消したのです。
1人の男と一緒に。」
神藤やい……。知らない人だな。
それに、姿を消した……?
じゃあもしかしたら今も生きているかもしれない?
「私はそれから30年後、彼女を見つけたのです。
快く話をしてくれた。
今でも、その言葉は忘れられません。
………話によると、もう能力はなくなった……と。」
能力がなくなった…?
おばあちゃんもそうだった。
年をとると能力はなくなるの?
「私が話せるのはここまでです。」
「ありがとうございます。」
心なしか、ライさんの目に涙がうっすら溜まっていた。