ハイスペックガール
疲れた……というか、だるい。
外の空気でも吸おう……。あ、でもここ、地下だった。
ちょっと出ようかな。
私は靴を履いて部屋を出た。
絆創膏をしていても、まだ足はズキズキと痛む。
お風呂でしみそうだなぁ……。
あ、確かここを曲がれば階段があったはず……。
暗いからよく見えないけど、この辺だったのは確かだ。
けれど、曲がってみても階段はなかった。
……あれ…。ない…。
さらに奥に突き進んでいく。けれど、階段らしきものは一つも見当たらない。
変だな。ここ、さっきも来たんだけど。
まさか……変なカラクリがしかけられてる……とか?
私がむやみに抜け出せないように。
「なんで凛がこんなところにきてるんだ。」
あ、この声、マキだ……。
振り返ると、壁にもたれかかる浴衣姿のマキがいた。
「まるで私が迷子みたいな言い方…っ」
「迷子だよ。この先は総長室。
どこを通っても同じ風景になるように設計されてるんだ。
簡単には出られない。防犯対策だよ。」
マキはトストスとスリッパの音を立てながらゆっくり私に近寄る。
昼間はあんなに簡単に出たのに。
「外の空気を吸いたくて出てきたの。」
「あぁ、階段を探していたのか。」
マキはそう言って歩き出した。
案内してくれる…のかな?
私は黙って一定の距離をあけてついていく。
「外へ通じる階段、夜はしまってあるんだ。」
「しまう……?」
「そう。このリモコンで操作するんだ。」
浩太は四角い光るものを手にしていた。
セキュリティがすごい……
「凛が逃げ出すことはないだろうけど、凛を連れ去ろうとしている奴らがいるんでな。」
あ、坂上組のことかな。
やっぱり知ってるんだ。
知ってて浩太を私の教育係にするなんて…何かあるんだ。