E・N・M・A~えんま~
やばい!!
とあたふたするワタシをよそに、ドアが遠慮がちに開き…
「…千夏、大丈夫?」
と全く異変に気がつく様子もなく、寝間着姿の母が訪ねた。
その声は寝起きの声で、ワタシの大声に目が覚めてしまったのだろうことがありありと窺えた。
ワタシはといえば、挙動不審にきょろきょろあちこちを見渡し、キョトンとするばかりだった。
ーー彼…宮下愁はどこにもいなかった。
「夢でも見たのね」
と部屋のドアを閉めて母が出て行った後も、それが夢だったのかと思えるほどに、何事も起こることもなく、ただワタシ一人が寝不足になってしまったのだった。