E・N・M・A~えんま~
「おはよ~ッ!」
朝の昇降口。
そんな軽い調子で後ろから呼び止められたその声に、ワタシは振り返るつもりもなく、上履きに履き替えた。
声を聞いただけで、それが誰なのか分かったからだ。
そして、思い出し怒りが爆発しそうでワタシは抑えるのに必死だった。
ともすれば、ここがどこだかも忘れて怒鳴りつけたい気持ちでいっぱいだった。
「ーー昨日の夜は最高だったよね?」
ふいに耳元で、彼が囁いた。
はいぃ??
思わず振り返ると、ネクタイを緩めに絞めたヤツーー宮下愁が立っていた。
……やっぱり、閻魔に瓜二つだ。そっくりなその顔に、切ない想いで胸がキュウッと締め付けられる。
「ね…」
ヤツは廊下の壁に手をついて、見下ろしている。
熱い姿勢が向けられている…。
不覚にも心臓がかなりのスピードで鐘を鳴らしてしまう。