E・N・M・A~えんま~
「いや。千夏の父を殺したのも、竜神を殺したのも、我だ」
「違うよっ、違う!」
「違くはないのだ」
閻魔の大きな手が、ワタシの頬を優しく撫でた。
「我の・・・せいなのだ」
低い声でこぼした言葉は、重く切なくワタシの胸をしめつけた。
「千夏は知らなかったことだが、我が禁を犯した罪が、今の千夏を苦しめることになったのだ。
前世の頃の事だが、我は次期閻魔となると約束されたが、若過ぎたのだろうな…。
敷かれたレールに任せてしまう事に抵抗があったのだ。
そして、禁じられていた『人界』の扉を開けてしまった…。
そして、そこから先は知っているだろうが、ちなつ…お前に出会い、我は初めて人を愛するという事を知った」
閻魔の唇が、ワタシの額に押し当てられた。
「ふっ…。ちなつの強い意志が煌めくその瞳に、魅かれたのだと思う」
「……たしも…。ワタシも…始めから閻魔に魅かれてた」
そう。
銀色の長い髪が、夕陽を浴びてきらきらと光り輝いて綺麗だと思った。
切れ長の目に宿る赤い瞳や、朱色の薄い唇にも、これまで会った事がない容姿に驚いたけれども、眩しくて引き付けられた。
例えこの世界の人間ではないと、気付いた後もーー。