E・N・M・A~えんま~
《いや、紛れもない事実だ》
じゃあ、本当の『竜神』は?
少しの間があって、
《わたしだ》
と答える声に、開いた口がふさがらない。
驚きすぎて、声も出ない。
姿形も見えない、ただの声だけだというのに、何やら聞いたことのある懐かしささえ感じたのは、そのせいだったのか。
《だから、言っただろう。大丈夫だと。
契約の鍵は、とうに壊れていてなんの意味も持たないのだ》
そう言うのと、『彼』が姿を現したのとは同時だった。
懐かしい姿は、人型をしていて、それはかつてもっとも慕っていた人ーー父だった。
お父…さん…!!
ワタシは彼に突進していった・・・。
だが、衝突することなく彼の体を通り過ぎていく。
まるで、何もないかのように。
そうか…ワタシ、実体がないんだった。