E・N・M・A~えんま~


「千夏はどこだ、と訊いてる。


――ソレは千夏じゃないのはわかっているぞ。



返答次第では、どうなるか分からんぞ」







しばしの対峙のあと、



シュウが諦めたようにふうっ…と大きく息を吐いた。



千夏もどきは不安げにその様子を見守っている。




「―――――」



そしてシュウは口のなかで何か唱え始めた。



抑揚のないそれは、人界でいうところのお経に似ている。



そして。




―――――――
―――――
―――



千夏の瞳がぐるりと一回転すると同時に、白い煙がずうっと体から出た。



それは小さいながらも竜の形をしており、



オーン…



と悲しげに鳴いてゆらゆらと浮上していった。



あれは、おそらく千夏の足に付いていた竜だった。



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