姉弟ごっこ
『明後日くらいには行けるみたいだから。お引っ越し、手伝ってあげてね』

もはや決定事項をただ伝えたも同然な口振り。
それを聞いたとき、私は帰宅後でもうへとへとで、ベットにバタンキューな体勢だったし、正直“さっちゃん”が誰なのかぴんとこなかった。

適当に相槌をうって電話を切った後、もしかして哲史か?と頭に浮かんだりしたが、こんないい加減な連絡だけで本当にやって来るとは、まさか思いもせず。

久しぶりの休日だからダラダラしようと決め込んで、昼間っから缶ビールを煽り、撮り溜めたドラマを見ていたときに突然ピンポンが鳴り、「鍵開いてたぞ、物騒だな」だなんて。
不機嫌な顔でズカズカ入ってきた哲史を見て、口に加えていたあたりめがぽたりと床に落ちた。

「ねぇちゃん、なにボケッとしてんの。暇なら手伝ってよ」

そして今、無事にベンチをリビングに置いた哲史が、そのあたりめを拾っている。
といった状況である。

「あんたねぇ、いきなり来て図々しいのよ。私、あんたとシェアしていいなんてまだ言ってないんだけど」
「おばちゃんがいいって言ったもん。それにたかが一週間じゃん。堅いこと言うなよ」

リビングの壁際に設置したベンチにどかっと座った哲史はほっぺたを膨らませた。

「ていうかそれ、そこに置くの?ものすごく邪魔なんだけど」
「どこ行くの?ねぇちゃん」
「電話!」
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