姉弟ごっこ
私と哲史、それから芽衣子は田舎の幼馴染み。同じ社宅に住んでいた。

哲史は私たちより五つ年下。
なので、今は24歳か。

私たち三人は仲が良くて、幼い頃からよく一緒に社宅の前にある公園で遊んでいた。
滑り台とベンチと砂場しかなかったけれど、それだけあれば子供には充分だった。

懐かしいなぁ。

「ねぇちゃん、このビール温くなっちゃったけど、冷えてるのってないの?」
「図々しいわね。冷蔵庫にあるけども」

それが今や、あたりめにビールだもんね。
よっしゃー!と立ち上がった哲史はCMに入ったのを見計らってキッチンに向かった。

私はファッション系の専門に、芽衣子は短大に進学したときに共に、そこそこ大きな地方都市に出てきた。
お互いに就職してから、一緒にこのアパートを借りた。
哲史は高専を卒業して地元の工芸品を作る会社で働いたりして、今は独立して家具を作ってるらしい。
新進気鋭の家具作家としてわりと有名なのだと、こないだ芽衣子の結婚式で数年振りに会った哲史ママが嬉しそうに話していた。

「本当に家具とか自分で作ってるんだね」呟いた私の前を、「え、知らなかったの?」プシュッとビールのプルタブを開けながら哲史が通り過ぎた。

「たまぁに、芽衣子からあんたの話は聞いてたけど」

芽衣子はお洒落な輸入物の家具や雑貨を取り扱うお店で働いているので、哲史の作品もチェックしているようだった。
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