姉弟ごっこ
「それにほら、結構役に立つよ?こっからここまでねぇちゃんの陣地ね、とかさ」

口を真横にいっぱいに広げ、哲史はにかっと笑った。

どうやら哲史は、ベンチを境界線にしてリビングを二分できると主張しているようだった。
砂場で遊んだ古い記憶が蘇る。
狭い砂場を枝で三分割して、「ここさっちゃんの陣地ね!」こってり日に焼けた上に顔中砂まみれで真っ黒にした幼い哲史が、今みたいに豪快に笑った、そんな思い出。

「陣地って、子供じゃないんだから」

呆れて言った私に、「ね、いいでしょ?いいよね!?」哲史が上目遣いで言った。

ふぅ、疲れる……。

「わかった、わかったよ」

図体はでかくなったけど、およそ十年振りにまともに会った哲史はちっとも変わっちゃいなかった。
お母さんも言ってたけど、田舎のよしみでルームシェアしてやるか。たった一週間だしね。仕方ない。

テレビを見ると、ちょうど予告で気になっていたシーンが流れていたので、私はベンチに座って大人しく続きを見た。

「夕飯どうする?」

ドラマが終わり、哲史は「ふぁーああ」腕を高く伸ばした。

「え、もうそんな時間?」

壁に掛けた時計を見ると、七時を回ろうとしている。
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