姉弟ごっこ
ひとりなら冷凍ごはんに納豆かけて終わるところなんだけど、どうしよう。
こういう場合、私が作らなきゃならない、のか?
冷凍ごはんで炒飯でも作る?

「俺、さっき荷物運んで汗かいたからシャワー使ってもいい?」
「うん、どうぞ」

具はなにがあったかなと、頭の中で冷蔵庫の中身を思い返していた私の目に飛び込んできたのは。

「ちょっと!あんたなにしてんの!?」

上半身裸、下はパンツ一丁の哲史の姿。

「なにって、シャワー浴びるから脱いで」
「だからってここで脱がないでよ!」
「え、なんで?」
「なんでじゃないの!当たり前でしょう、共同スペースでパンイチはいかんでしょうが」

ルールに付け加えねばと思いながら、私は哲史の肢体をなるべく直視しないよう目線をうろちょろさせた。
むすっとした顔だった哲史は、徐々に口の端を緩めてゆく。

「それってねぇちゃんが、やーらしい想像してっからじゃね?」
「……はい?」

ええっと、なに?やーらしい、って?
首を捻る私に顔を近付けた哲史は、にんまりと悪戯に笑った。

「だってねぇちゃん、チラチラこっち見すぎなんだもん。犯されるかと思った」

お、犯……!?

「んな訳あるかぁーっ!」

私の怒声がリビングにこだましているうちに、哲史はぴゅーっと洗面所へ逃げてった。

変わってない、哲史は幼い頃の“さっちゃん”のままだ。
ってな印象が、ぐるっと180度、いやぐるっとだから360度?とにかく変わった。
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