悪魔な彼が愛を囁くとき
薄暗い部屋の中、まだ、深い眠りにいる彼の頬に手を伸ばして触れてみる。
チクチクとする髭に触れ、思わずクスリと笑いが漏れた。
私の知っている彼の顔は、いつも眉間にしわを寄せて私を怒る顔か、営業用の作り笑顔、そして最近知った私だけに見せる表情に、何度混乱させられただろうか⁈
その彼が今、無防備な寝顔で目の前にいる。
今なら何をしても気づかないだろう。
ウズウズしだした私は、カットされ整った眉を人差し指で撫でてみる。
ピクッと眉が動くけど、目を覚まさない様子に更に調子にのって彼の高い鼻すじを指先でなぞる。
そしてそのまま彼の唇におりて、そっと指先で唇の輪郭をたどり何度もなぞりながら思う。
この唇が…
何度も私の唇にキスをした…
甘い蕩けるようなキス
情熱的なキス
それから…
胸についているいくつもの赤い痣を残したのね。
体中にキスする度に
かすれた甘い声で
『りん…』
と名前を呼ばれ、見つめる熱い眼差しにとらわれて
『すきだ』
と言われ、体の奥底から甘く蕩けるような感覚に落とされて
耳を食み、ゾクッとする甘い疼きに声をあげるまで微妙なさじ加減で触れてくる唇に焦らされた。