悪魔な彼が愛を囁くとき
……もう、無理。
今日は仕事できない。
頭を抱え、その場にしゃがみ込む私。
「なんだよ…バレて嫌なのか?」
そうじゃなくて…
「恥ずかしいの…綾乃さんは仕方ないとしても、オーナー夫妻に知られてるなんて仕事しにくいよ」
ぎゅっと囲うように抱きしめてくる仁。
「気にするな。お前は俺の奥さんになるんだし、喜んでいるよ」
「奥さん?」
奥さんになるの?
今のって……まさかのプロポーズですか?
アワアワしだす私を見て苦笑する仁。
「当たり前だろうが…その気がなきゃ従業員に手を出さないぞ」
「……そうなの?」
「お前、俺のことなんだと思ってるんだよ」
「……鬼畜な…悪魔」
「あっ…」
ドスのきいた声にビビりながら…
「……だって、他のスタッフやお客さんには優しく笑うのに私には優しい顔なんてしてくれなかったじゃない。いつも意地悪くて私のこと虐めるのが楽しいのかと思ってたのに、好きだって言われたのも最近だし、恋人同士になったのも昨日だよ。しばらく恋人としてつきあってから考えてみたらどうかな?」
「どうせ結婚するんだ…グダグダ言ってないて素直にはいって言えばいいんだよ」
有無を言わさないというように悪魔のように囁いてきた。