悪魔な彼が愛を囁くとき
「コホン…」
少し離れたところから遠慮気味に咳払いが聞こえ、キスが止まる。
「…なんだよ」
頭をかきむしり、立ち上がった仁は、邪魔されて不機嫌マックスの声で咳払いした相手に食ってかかる。
「そろそろ、お店を開けたいんだがな…」
その声は、オーナー⁈
いや、それよりも見られてたよね…
いつから?
ボッと熱くなる顔
両手で熱くなっている頬を隠し、恐る恐る声をする方を盗みみれば…そこには
オーナー夫妻
綾乃さん
昼間のパートスタッフが数名
誰もが頬を赤らめ気まづいのか視線を合わせることなく彷徨っている。
やだ…
まさかみんなに見られてたの?
仁のシャツにしがみつき、動揺を隠せない。
それなのに…
「あぁ…朝礼の時間か⁈それじゃ、朝礼を始めます」
見られてたってわかってるくせに、仕事モードに切り替わる仁に言葉が出ない。
それは、みんなも同じようで唖然としている。
気持ちが切り替えることができないまま上の空の私の肩に突然仁が手を回してきた。
「最後に私事ですが、この度、桐谷 凛さんと結婚することになりました。夫妻となっても何も変わらないので今まで通りよろしくお願いします」
ここぞとばかり、発表してしまったのでした。