悪魔な彼が愛を囁くとき
短い時間の中で、いつから私との将来を考えてくれていたのかと知りたい気持ちは、すっきりしないまま今に至る。
これで、結婚式場や日付まで決まっていたら…笑えない。
繋いだ手をぎゅっと握り微笑む男。
「これで、よそ見なんてできないからな」
「いつ、私がよそ見なんてしたのよ」
反抗する私をギロッと上から睨む鋭い視線に唇を尖らせ抗議した。
「……業者とか……客に愛想良すぎだ」
「……」
はっ…
いやいや…愛想よくするのは当たり前でしょうが?
「……自分だって必要以上にお客さんに笑顔振りまいているじゃないの⁈」
「俺のは営業ようだ。…常連になってもらう為に名前と顔を覚えて、俺の笑顔一つでおばさん達の財布の紐が緩んで売り上げが伸びるのは間違いないし、また来店してくれるなら安いものだ。、誰が好き好んでおばさん達に笑顔を振りまくものか⁈」
うわっ…腹黒い。
やっぱり、仁は悪魔だわ。
常連さんが聞いていたら泣くよ。
「なんだ…その顔は?」
「別に…」
「とにかく、お前は俺と違って営業用じゃないだろうが⁈業者は仕方ないとして客の男には愛想を振りまく必要はないからな」
人の自分勝手な言い分に呆れため息が漏れていた。