悪魔な彼が愛を囁くとき
歩いてこない私にしびれを切らし、戻ってきて繋がれた手のひらに驚きを隠せない。
「……あのーこの手は?その前に送って行くって何ですか?」
「…好きな女がフリーになって目の前にいるのに1人で帰らせるほど俺は寛容じゃない。それに、ちゃんと好きだって言っただろう⁈」
はい?
言ってないし…
思わせぶりな事は言ったかもしれないけど好きだなんて聞いてないから…
首を左右に振り、手を解こうとするのにぎゅっと握られる手のひら。
「おい、逃げようとするな」
ヒェ〜
視線をそらして低い声にビクつく私。
「こっちを見ろ…」
恐る恐る視線を向けると店長はどこか悲しげな表情をしているように見えた。
生唾をゴクンと飲み込んで、一瞬、息も止まる。
店長の手に引かれ男の腕の中にいた。
ぎゅっと抱きしめる腕にドキドキが止まらない。
グイッと顎を持ち上げられ、至近距離のイケメンフェイスに頬が赤くなっていく。
嫌いな相手でも、いい男にトキメクのは女の性なのか⁈
「……凛、俺はお前が好きだ。俺以外の男にお前を取られるなんて我慢できない。俺を好きになれよ」
今までに聞いた事のない甘く色っぽい声で私を堕としにかかる悪魔の声がした。