悪魔な彼が愛を囁くとき
『嫌です』
『即答かよ』
ガッカリ顔の店長に、今までの仕返しが少しはできたとほくそ笑む。
『なんだ、その顔は?』
『いえ、別に…』
グイッと引っ張られ、また店長の腕の中。
だけど、今度は抵抗できた。
だって、2人の胸の間には私の手がガードしているから完全に抱きしめられていない。
頭上でクスッと笑い声
『それで抵抗しているつもりか⁈』
ぎゅっと強く抱きしめられて2人の空間が狭まる。
私の手は意味を持たない。
優しく頭部を撫でだす男の手のひらに戸惑い、離れようともがくと頭部も固定されてしまった。
『仁……ジンって呼べたら離してやる』
耳元でゾクッとする甘い声が聞こえ、背筋に走るピリッとする甘い疼き。
『…り‥ん…すきだよ』
艶っぽい声と耳にかかる甘い吐息に体中が蕩けそうになる。
『……じ…ん‥』
無意識に甘い声が出ていた。
うそ…
言ってから気づいて頬が熱くなる。
『名前を呼んだんだから…離して』
自分からけしかけたくせに目を見開き驚いている男。腕力が緩んだ隙にドンと突き離して階段を駆け上り鍵を開けて部屋の中に逃げ込んだ。
そして今に至るのだ。