悪魔な彼が愛を囁くとき
瞼の腫れはそのうち引くだろうけど、目の下のクマはコンシーラーでその上から厚塗りのファンデで重ねる。
瞼の腫れをごまかす為にアイラインを強めに引いてピンク系のアイシャドウを濃くする。
うん…これならごまかせる。
化粧ポーチをロッカーにしまい休憩室のドアノブに手を掛けようとしたら…
ガチャってドアが開いた。
「……あははは、凛、そのおかめ顔…ウケる……あははははは……腹いて」
目の前で豪快に笑う男。
「店長、笑うなんて酷いです。お望みどおり化粧直ししたんですよ」
「…その顔ちゃんと見たのか?…こっちこい」
回れ右と肩を押され鏡から少し離れた距離で立たされて背後に店長が立った。
「どうだ?遠目に見るとアイシャドウが濃すぎて腫れた瞼が余計に浮いてるだろう」
確かに…
「…直します」
「俺が直してやるよ。目を閉じろ‥‥」
鏡越しに睨まれ、低音の声が冷たく聞こえる。
仕方なく目を閉じた。
「お願いします」
瞼の上を男の指が撫でていく。
右目
左目
そして頬骨の辺りを指で撫でつける。
右頰
左頬
指が離れ耳に息がかかる距離で声が聞こえた。
「こんなもんでどうだ?」