悪魔な彼が愛を囁くとき

「メーカーさん来られてますよ。行かなくていいんですか?」

耳側でチッと舌打ちする男。

怖いからやめて…

「…また、後でな」

抱きしめている腕を解きイライラしながら頭をかいて出て行ってくれた。

ホッとした瞬間

脱力感がハンパない。

朝からあんなふうに口説かれたら私の身がもたないよ。

勘弁してほしい。

手のひらに残った男の唇の感触と抱きしめていた感触…

耳に残る甘いセリフに艶っぽく囁いた声が残っている。

もう、なんなの⁈

どうして突然口説き出したんだ?

私のこと睨んでいるぐらい嫌いじゃなかったの?

冷たい口調に

冷たい態度。

すきだって言うけど、いつからだよ。

訳がわからん…

新手の嫌がらせか?

そうだよ。

それだ…

それしか考えられない。

そう思おう。

にっくき店長め…

負けるものか…

制服に着替えいざ出陣。

「おはようございます〜」

いつもよりテンションを上げてホールに入って行けば、カウンターの奥で背の高い男2人が振り返る。

「おはようございます。桐谷さん」

笑顔が素敵なコーヒーメーカーの業者さん

「佐賀さん…おはようございます」
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