悪魔な彼が愛を囁くとき
「…なんですか?」
「せっかく飯を食べに行くんだ。その店の接客を勉強してこい。小さなことも見逃すなよ…明後日、聞くからな」
「はい」
ピシッと背筋を伸ばした私に優しい声で
「楽しんでこいよ」
肩をポンと叩いた。
肩に置かれた手にドキッとして店長を見れない。
『じゃあ後、頼む』と手をあげてホールから出て行った。
綾乃さんと佐和さんはなぜかニヤッと笑う。
なんなんだ?
この2人も変だけど…店長も変だ。
今日の店長はらしくない。
何か変な物でも食べたのだろうか?
そう思うぐらい可笑しいのだ。
「じゃあ、明日11時に駅近くの『コンフォルト』でね」
「はーい」
「お疲れさま」
「お疲れさまでした」
帰ったと思っていたら綾乃さんが振り向きざまに
「ドタキャンしたらタダじゃおかないわよ」
ヒェ〜
怖い…
女子会トークイヤだなぁ。
「……そんなことしませんよ。店長からの宿題もあるのにドタキャンなんてしたら後が怖いじゃないですか⁈」
綾乃さんも怖いけど、店長も恐ろしい。
「そうよね。明日が楽しみだわ…」
ウフフと足元を軽やかにしてホールを出て行った。