悪魔な彼が愛を囁くとき

出迎えてくれた男性が

「お待ち合わせですか?」

店内を物色していたのを見ていても顔色を変えず、笑顔でさりげなく尋ねてくれた。

すごい…
私だったら(なんだこいつ)って顔に出てるな…

「……あっ、はい」

「3名様でお待ち合わせの桐谷様ですか?」

「そうです」

「ご案内いたします」

大きな窓ガラスの横を通り、中庭が見える奥の席に案内される。

すでに、綾乃さんと佐和さんは来ていて私待ちだったようだ。

「お待たせしてすみません」

「いいのよ。佐和さんとさっき来たところだから気にしないで」

席に着くと

先ほどの男性とは別の店員が温かなおしぼりとお水の入ったグラスをすぐに持ってきてくれた。

うわっ…
タイミングバッチリ。

「おしぼりをどうぞ」

手渡しにちょっと感激。

テーブルの上にポイッと置いていくお店が多い中で、こんな細かいサービスは嬉しい。

「ありがとうございます」

つい、お礼の言葉が…

ニコッと笑う店員はグラスを置いて

「ご注文、お決まりになりましたらこちらでお呼びください」

トレンチを脇にスッと入れて、反対の手を差し出して呼び鈴を指す姿も素敵だった。
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