悪魔な彼が愛を囁くとき
そうだろうか?
既に答えは出ている気がする。
嫌いなはずなのに何を迷っているのだろう?
昨日の営業後の帰り道も店長は送ってくれた。
繋がれる手は嫌じゃなくて、ドキドキして手のひらから伝わる温もりが嬉しくてもっと繋いでいたいと思っていた。
『凛の手、小さいな』
『そうですか?』
『……あぁ、凛と手を繋ぐの夢だった。繋いでみると小さくて驚いてる』
さらっとなんて言いました?
「抱きしめてみると見た目以上に華奢だし、そのくせ出てるとこ出てるし…』
『パワハラです』
『アッ、好きな女を観察して何が悪い』
それに好きな女って…
照れ臭さを隠す為に睨みつける。
何が悪いって…悪びれもなく言う男の視線から目がそらせない。
『…俺を睨みつける目もかわいいと思うぐらい好きだよ』
耳まで真っ赤かになっているに違いない。
どうしてこの男は私の心臓を跳ねさせるのだろう…
恥ずかしさから下を向いてドキドキして何も考えられないうちにアパート前に到着。
『…凛』
名を呼ばれ顔をあげる。
右頬を撫でる手のひらに擦り寄りたくなる衝動を抑えていたら、指先が唇をかすめいく。
『明日の夜開けておけよ』