悪魔な彼が愛を囁くとき
指先がかすめただけなのに
唇がジンジンしたのはなぜ?
今だに残っている男の指先の感触…
無意識に触れていた。
だけど…
違う。
この指先じゃない。
あの時の感触をもう一度感じたいと思うのはどうしてなのだろう?
「凛ちゃん……凛ちゃんてば、トリップしてないで戻ってきて…」
「……あっ、すみません。なんの話してましたっけ?」
意識を戻したら綾乃さんが目の前で手を振っていた。
「もう…いいわ。私達が口出しすることじゃないもの」
「綾乃ちゃん、そんな言い方しないの。好きになるのも嫌いになるのも他人に言われて変化するのは本物じゃないわ。店長を擁護する言い方をしたかもしれないけど、勘違いしないでね。…私達は凛ちゃんが店長を選ぼうと撰ばなかろうと本当はどうでもいいの…余計なおせっかいかもしれないけど、凛ちゃんが幸せになってくれればいいのよ。『この気持ちがなんなのか』が、わかるまでじっくり考えてみるといいわ。2年近く待ったんだもの…あの男もちょっとくらい待てるでしょう」
「予想外のライバル出現に、どう出てくるかしら?」
「そりゃ…蹴ちらすでしょう」
「2人ともなんのことですか?」