悪魔な彼が愛を囁くとき
男は、自分が座っていた隣の椅子を少し引き私に座るよう促す。
繋いだ手を離す気がないようなので、仕方なく座ることに…
私の視線はスッと長い指なのにゴツゴツとした男らしい手で、その指がタバコの煙を消すと昨日の夜のように私の頬を撫で去っていくのを目で追いかけていた。
小さく鳴っていた鼓動がドキンドキンと大きな音をたて、男にも聞こえそうな勢いで早く鳴っている。
「ノンアルコールだったはずなのに、頬が真っ赤だな⁈」
「えっ…」
「良い潰されて俺との約束が無くなっても困るからな…美鈴さんに頼んでおいた」
美鈴って誰?
男から出る女姓の名前にイラっとしてしまう。
カウンターの向こうにいる店員の女性がそうなのだろうか?
男と視線を合わせ微笑んでいる。
なんだか面白くない。
顔に出ていたのかその女性は私に向かって
「仁君たらわざわざ電話をかけてきて、『今日、うちのお店の従業員が行くから髪の長い女の子にはアルコールを出すな』って言ってくるんだもの」
「ザルのあいつらが飲まないわけない」
「2人のこと…よく知ってるんですね」
「んっ⁈ヤキモチか?」
嬉しそうに笑みを浮かべた男に図星を突かれたようでドキドキしていた。