悪魔な彼が愛を囁くとき
悪魔にハートを奪われました
「そ、そんなことありません」
「チェッ…」
いつも見る怖い顔と違い、拗ねる仕草で可愛く口を尖らせる店長。
そんな表情を見せないでほしい。
なんだか悪いことをした気になる。
カウンターの向こうでクスッと笑う店員
「仁君のそんな表情見たことないわ。彼女の前だからかなぁ⁈」
「彼女じゃないです」
からかう店員に顔を向けて真顔で答える私。
「近々そうなる予定だろう⁈」
うん⁈と顎で促す男の笑みは、私の気持ちの変化に気づき、自信に満ちていて憎らしいぐらいだ。
この場で、はっきりとそんなことないと断言できない自分にも驚いている。
気持ちがはっきりしない以上
「どうですかね?」
私の答えに口角を上げ微笑む男。
「絶対ないって言わなかったな…今は、その答えだけで満足だ」
あれ⁈
本当だ…
絶対ないって、また言えばいいのに…
自分の変化に戸惑った瞬間、心の奥がトクンと鳴ったような気がした。
そこへ重曹の扉が開いて、外の雑音と一緒に子供の声が聞こえ振り向くと、男の子はカウンターから出てきた彼女に飛びつき彼女はそのままその子を抱き上げてハグをした。
「ママ、ただいま…」