悪魔な彼が愛を囁くとき
「新ちゃん、おかえり」
「あのね…パパとさくらのみちをあるいてきたんだ。花びらがね…ちらちらおちててきれいだったよ。あしたは、ママと歩きたいな?」
ニコニコと男の子の話を聞きながら、抱き上げていた男の子を椅子に座らせる。
「ママも新ちゃんと一緒にみたいなぁ…でも、保育所のおくりおむかえはパパのたのしみだし、どうしようか?」
「じゃあ、明日だけママにお願いしようかなぁ⁈」
そこに立っていたのは、来店時に出迎えてくれた男性だった。
「うん…ママ、明日楽しみだね」
「楽しみね…」
男の子を囲んで親子3人の光景が微笑ましく、その様子を眺めていたら…
「仁…お前来てたのか?」
「あっ…じんくんだ」
男の子と男性は一斉にこちらを見た。
男性は、私達の繋がれた手を見てニヤッと意地悪く笑う。
「あれ…君は仁の彼女だったのか?」
「いえ…違います」
今度は力強くちゃんと言えた。
「チェッ…否定するなよ」
先ほどの拗ねた表情とはまた違い、どこか子供ようにいじけた顔でそっぽを向いてしまった。
なんなの?
本当のこと言っただけじゃないの。
顔を覗こうとすれば、余計に背を向けだす。