悪魔な彼が愛を囁くとき
「なんの話してるんだ?」
新ちゃんとじゃれあっていた人が突然、元いた席に戻ってきてこちらを見てくる。
あなたの話をしてましたけど…
「女同士の内緒話よね」
助け船を出してくれた美鈴さん
感謝です。
「ふーん…ところで大輔さんは?」
プイッと顔をそらす男。
ちょっと…その態度はなんなのよ。
ご機嫌斜めですか?
「タカタさんが来られたから奥で話してるわよ」
タカタさん⁈
業者のタカタさんかしら?
美鈴さんと話に夢中になっていて大輔さんがいなくなったことに気がつかなかったらしい。
「ちょうどよかった。発注し忘れたのあったんだ」
「あら、ちょうどよかったわね。話が終わればこっちにも顔を出すから待ってなさいよ」
「…えぇ、そうします。……なぁ…凛」
突然、甘い雰囲気になった男はこちらに体ごと向き、カウンターの上にあった手を繋いでくる。
そして、低く艶めく声で名前を呼ばれた。
ワァッ…
な、なんなの…
鼓動が早くなる。
「この後、どうする?桜並木の下でも歩いてどこか行こうか?」
手の甲を引き寄せられ、甲に唇を押し当ててくる。
うそ…
それ…甲にキスしてる⁈…わよね。