悪魔な彼が愛を囁くとき

「はーい」

美鈴さんの声に我にかえれば、新ちゃんは奥へ駆けていく後ろ姿だった。

「仁君、そう言う事は2人きりの時にしてね。聞いてるこっちが恥ずかしいわよ」

「美鈴さん、いたんですか?」

ニヤっと笑って、いけしゃあしゃあとすっとぼける男。

「はいはい、お邪魔でしたね」

呆れ顔の美鈴さんの元に新ちゃんが戻ってきた。

その後からパパさんが顔を出す。

「美鈴、お疲れさま」

「もう帰るわね…これ以上ここにいたら熱で逆上せてしまうわ」

チラッとこちらを見るパパさん。

「あぁ…そう言うこと⁈」

なんのことかわかったように可笑しそうに笑うパパさん。

「じゃあ、またね、凛ちゃん…仁君も熱烈なアプローチが実るといいわね」

「おねぇちゃん、バイバイ」

「はい、また…新ちゃんもバイバイ」

可愛く手を振る新ちゃんを連れてクスクスと笑いお店を出ていく。

パパさんは、外までお見送り。

2人きりの沈黙の時間

数分なのにとても長く感じてしまう。

頭の中は、先ほどの言葉が何度もループしている。

数日前に振られた男の事も思い出さないほど、あなたに振り回されているというのに…

これ以上、私の心に入ってこないで…
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