悪魔な彼が愛を囁くとき
店長の冷ややかな声に目頭が熱くなる。
くそッ…
どうしてこんなことになったのかわからないまま、しゃがみ片付けていた。
「はい…私は、すぐに新しく作り直してもらってきます」
「頼む」
店長は、周りのテーブルのお客さんにかかっていないかケガがないか確認する為に離れていくと、佐和さんがスッと立ち、去り際にクスッと笑う声が聞こえた。
えっ⁈
まさかね…
モヤっとした感情が更に深くなっていく。
ランチの時間帯が終われば、悪魔のような店長にこっ酷く怒鳴られるのだろう。
集中できないまま、ランチ時間が終了。
お客さんのいなくなった店内に、真っ先に響く店長の怒鳴り声。
「凛、来い」
「はい…」
「今日の失態はなんだ⁈」
「……すみません」
「アッァ…お客にケガもなく洋服にもかからなかったから良かったが、どうして皿を落とすんだ」
そんなこと言ったってわからないわよ。
理由はどうあれ、非は私にあるから口答えできない。
「店長、そんな怒らないでください。凛ちゃん、わざとじゃないんですから…」
かばってくれる佐和さん。
「わざとじゃない⁈そんなこと当たり前だ。佐和、お前もすれ違う時は料理を運ぶ奴が優先だ」