悪魔な彼が愛を囁くとき

店長は、ちゃんと見てくれていたんだ。

ウルっとくる涙を我慢する。

「……すみませんでした。私がすれ違ったばかりに…凛ちゃんはお料理を落としてしまったのね。以後、気をつけます」

「あぁ…他のスタッフも今後ないように気をつけてくれ」

「はい」

「それじゃ、お疲れさん」

いつものように、店長はホールから出ていった。

「……佐和さん、私のせいで佐和さんまで怒られてしまってすみませんでした」

低姿勢で謝ったのに…

「せっかくかばってあげたのに…私まで怒られてやぶ蛇よ」

トゲのある言い方で、あきらかにご機嫌ナナメの佐和さん。

「すみませんでした」

謝るしかない私。

そこへ

「お疲れさま…凛ちゃん、ドジっちゃたって⁈ドンマイ」

綾乃さんが慰めにやってきてくれる。

「お疲れさま…凛ちゃんのドジのおかげで私にまで怒られちゃった」

「あらら…佐和さん災難でしたね」

もう、なにも言えません。

「凛ちゃんも朝から災難だったようだし、今日はついてないわね」

「……」

一瞬の沈黙と後

「また、明日」

佐和さんがスッとホールを出ていってしまった。

「……佐和さんと何かあったの?」
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