悪魔な彼が愛を囁くとき
佐和さんに気をつけるのよと言われたけど、今日の出来事は偶然だと思いたい…
コンフォルトへ3人で楽しくランチをしていた時は、応援している口ぶりだった彼女が、一夜明けて豹変した。
綾乃さんや他のスタッフがいる時は普段どおりの彼女が、時折見せる意地悪な顔、そして、店長が私をかまうと敵意の眼差しで睨んできた。
だけど、綾乃さんと私の憶測だけであって、佐和さんの口から直接聞いたわけじゃない。
きっと、考え過ぎだ。
だけど…明日も、同じだったら…と思うと気が重い。
1人でいると疑心暗鬼になり、余計なことまで考えてしまう。
確かでもないのに不安が募っていく。
もし、店長が美人の佐和さんの気持ちを知ってしまったら心変わりするかもしれない。
「凛?」
頭上から聞こえる心配気な声は、先ほど怒っていた人とは別人のようだ。
「……て、店長。ノックぐらいしてください」
気配に気づかず、物思いにふけっていた私は、驚きを隠せずにいた。
「その驚いた顔はなんだ?」
「だって……突然、声をかけてくるから…」
「何度も呼んだ…返事しないから、さっきのことで落ち込んでいるのかと思ったんだが、その顔は違うみたいだな⁈」