悪魔な彼が愛を囁くとき
「そんな顔するな…勘違いするだろうが…」
なにが?
そんな顔?
勘違いってなに?
店長の顔を頬を染め見つめていたらしい私は、男の心を煽っていたなんて気づいていない。
首をかしげ、なんのことか尋ねている始末だ。
「あー、クソ。可愛すぎだ」
両肩を掴まれ、押し倒される。
うそ…
顔が近づき、欲情した男の目に引き込まれ私の手は男の頬に。
ゴクッと男の喉ボトケが動き、私はそっと引き寄せていく。
「……り…ん。すきだ」
男の甘いかすれた声に緊張しているのが伝わる。
(わたしも…)
「じん‥が……す…(き)」
最後まで言おうとした瞬間
ガチャッとドアが開いた。
店長は顔を上げ驚いた顔をした後、表情が険しくなる。
私は、男にのしかかられ体を起こせないから、視線だけでドアの方向を見つめたが足元しか見えない。
「……佐和、何度も邪魔するな」
佐和さん?
火事場のなんとやらで、男を突き飛ばし体を起こした。
私と佐和さんの間で、気まづい雰囲気が流れている。
「忘れ物をしたから…」
ツカツカと男の前に来て
「仁…私ね、昔からあなたが好きよ」
目の前の光景にア然とする。
唇を食むキスをしていたのだ。