最果てでもお約束。

なぜ4国に前線基地を作らないのか。
これについてもよく解っていないのだけれど、どうも4国に入ったエージェントには1日中に連絡が取れなくなっているらしい。
4国は知らぬ存ぜぬ。米国が一度小隊規模のエージェントを送り込んだが同じように連絡が取れなくなったとかなんとかとうたた寝町に昔から住んでいる華僑の劉さんが言っていた。
そういえばその劉さんは大丈夫なのだろうか。
ぶっちゃけていえば劉さんも中国からのエージェントであり、我々”対4国入国管理室”
に不正規ルートで武器弾薬を調達してくれていた人だ。
縦縞君のメールには『他国のエージェント制圧に行く』とある。
これはつまり、4国と本格的にやりあう前に他国勢力を押さえ込むつもりなのだろう。
昔、4国が独立してあの惨劇が起きた当初は本当にどこかと戦争するつもりなのかと思わせる程いた各国のエージェント達も、あまり動きの無い4国のせいで今はかなりの人員減少をされている。これは四室での情報を元に推測されているのだが、今は米国・中国・韓国・中東・その他全員合わせても10人やそこら。
町中で遊び半分に狩りをしている一室別隊（チンピラとも言う）には無理でも、完全武装で実戦訓練を受けた一室本隊12人に各個撃破されればひとたまりも無いだろう。
あぁ、劉さんの中華料理好きだったのにな。
次、”不良”について。
一室の人間がほぼ断定している所を見ると、例の対象の検死は済んでいるのだろう。
彼が始末した相手は一目で解る。かならず大きな刀傷があるから。
問答無用に斬り捨てたのだろう。あの眼をした彼を止められるものは何も無い。
そしてまた、あの寂しそうな顔をしたのだろうか。
親友では無い。友達ですら無い。けれど、彼には2度も命を救われたし何よりぼくは、彼が嫌いでは無かった。
おそらく彼は今やこの町の人間にも通報され、一室の始末対象になっている。
悲しかった。あの大きな背中が思い出される。寂しくて、可哀想な背中。
彼にはもう会えないかもしれない。