最果てでもお約束。
部屋に戻って冷たいパンをくわえたアキラの横にある携帯を掴んでさっそく電話。
相手はだれでもいいが一応仕事場である対4国入国管理室に。
・・・・・話し中。ぷーっぷーっと音が鳴るだけ。
本部には電話は沢山あるが、縦縞君のメールが本当なら今頃電話が集中しているだろう。ならば104・・・電話番号案内に電話。
・・・・・話し中。これでどうやら最悪の可能性だけが残った。
「アキラ・・・すぐに出れる準備をしてくれ」
「あい?」
なんで?といった表情のアキラだが、ぼくの顔を見てすぐに昨夜洗濯していた自分の服を取りに階下に向かった。ようやく事態の深刻さに気がついたか。
最悪の可能性。それはつまりこの建物どころかこの町全ての電力とネット環境と電話のダウン。
戦略のいろはではあるが、まさか本当にそんな事態になっていたとは。
四室からなんの連絡も無いのでは無く、その連絡手段が奪われていた。
おそらく縦縞君がメールをくれてすぐに町はこの状態になったのだろう。そして今もその状態は回復していない。
どうやら、今は戦時下らしかった。
ならばどうする。武器を取って戦うか?否、武器になりそうな物は我が家には無い。
仕事場である対4国入国管理室に行ってみる?これも否。アキラをどうするつもりだ。
そもそも今やこの町をなんとか安全にしていた”写メール検索ネットワーク”も使えない。そして町はおそらく暴徒が出始めている。そんな町中にはぼく1人でも危険だ。
ならどうする?昨日までのぼくならこのままほとぼりが冷めるまで家の中にいたろう。しかし今はアキラがいる。4国との戦争がいつまで続くかはわからない。
なら、ぼくがやるべき事はただ1つ。
「ひぇージャケット生乾きぃぃぃ」
この情けなくて弱弱しい、けれどどこか幼馴染を思い出させる旅人をなんとか逃がしてやる事。
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