最果てでもお約束。
時速30kmで北に向かって20分も走れば山がある。それを越えてしまえば実質この町の外だ。
その山もだいぶ大きくなり、だんだんと家並みも減ってきた。
予想通りというかなんというか、もう15分は町を走ってきたけれど人影はほとんど無し。
見かけてもその人の手には物騒な物が握られていた。
縦縞君がメールに書いていた”マニュアル”は、一家に一冊はある町内紙で有事の際にはこうしなさいみたいな事が書いてある。
基本的には家から出ない。一室別隊に参加している人は、自衛の手段として警棒その他を持って町の治安維持に努める。
・・・・・さっき見た人は包丁持ってましたけどね。
「・・・・・・・・・・・・」
アキラはバイクに乗ってからはまったくの無言。どんな顔をしているのか見たいけれど、ぴったりと背中に張り付かれているので見えない。ってゆーか引っ付きすぎで気持ち悪い。だってこいつなんか柔らかいんだもん!
ちょっとだけでも離れてもらおうと走りながら後ろを向こうとしたその時、視界に見慣れないモノが見えた。
煌く何か。
アキラに文句を言うのを止めて前方に眼を凝らすとそれはどうやら日本刀の刃が日の光を反射している事に気がついた。
この町に日本刀。ならそれは・・・・彼しかいなかった。
なだらかな坂をゆっくりと歩いて下って来ていた彼もこちらに気付いたらしい。
日本刀を正眼に構える。
「ちょっとー!?」
びびって大声を上げてしまった。いやだってさぁ・・・それはないでしょうが。
彼と6歩くらいの距離を開けてバイクを停車する。
「ん・・・・お前等か」
やっと日本刀を下ろしてくれた。くそぅ・・・こっちはその身の安全まで心配してたのに(勝手にだけど)
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