最果てでもお約束。
バイクを再始動させてなだらかな坂の頂上を目指す。相変わらずアキラは何も言わない。
もうすぐこいつともお別れ。少しどころか、かなり寂しい。
こんなに人と話したのは久しぶりだったし、何よりアキラの声が、性格が、表情が、いつの間にかぼくは気に入っていたらしい。
どことなくゆうを思い出させるその弱弱しさも。全部含めて。
この騒動が終わったらいつの日かまたこの町に寄ってはくれないだろうか。
いや、無いな。こんな目にあった町に、また戻りたいなんて思わないだろう。
散々だったもんな。思い出して苦笑がもれる。
「楽しかった」
アキラがつぶやいた。嘘だろおい。おれ独り言言ってたか?
「・・・・・・嘘つけ」
心を読まれたみたいでなんとなく気まずい。
それをなんとかチャラにしようとジョークの1つでも言おうとした時、坂の頂上が見えた。
ついでに狭い道を塞ぐように停まった緑色の軍用車とこっちに向けてライフルを構える金髪の軍人さん×5も。
「ちょ・・・マジ?」
ついつい苦笑いが顔面に張り付く。金髪の軍人さん×5の内の1人が胸の前で十字を切りだしたのを見て全速ターン。
「ひぇぇぇぇ!?」
前の見えていなかったアキラが振り落とされそうになる。
なんで他国の軍人が封鎖してんだよっ!しかもありゃ問答無用で撃つ気だったろ!?
射線をとられないように出来るだけジグザグに走りながら上ってきた坂道を下る。
「ぱらりらですかっ!?」
どうやらこの町を北から出るのは無理そうだった。おそらく東も西も無理だろう。
理由はまた後で考えるとして・・・。
「こっからだと町が一望だねー!」
アキラが元気になった事と脱出が不可能っぽい現実。嬉しさが勝っているか、絶望感が勝っているか自分の心に聞いてみたかったけれど・・・。
「花火とか見えるんだぜー!」
結局笑っているぼくは、きっと嬉しいのだろう。
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