最果てでもお約束。
アキラがぎゅうと目を瞑っているのが目前に見える。頭は・・・良し、打ってないな。
変わりに下敷きになったぼくの左手の甲が今頃痛み始めた。まぁ折ってなければ良い。
「そのまま転がってろっ!」
言うが早いか、声の聞こえた方からはガララララと雷の爆発にも似た音が轟く。
日本語だから一室の人間だとは思うけれど・・状況がわからない。
ぼくは不安のまま目前にある目を瞑ったアキラの顔を1秒とも10秒ともつかない間、ずっと見ていた。気持ち悪いな。
ぼくも目を瞑っていたかったけれど、そうすればぼくの脳はきっと考えるのを辞めてしまうだろう。ここは戦場だ。考えるのを辞めた奴から死んでいく。
ぼくは良い。幼馴染だって助けられなかった。仕事だって出来ない。家族とも仲良く出来ない。彼女も幸せにしてやれない。友達だって・・・できない。
けれど、アキラは。こいつは。
助けないと。
たったったと前身にやたらと重心のかかったような音を立てて近づく人影が目の端に見える。
何か言っているようなのだけれど、至近距離で大口径の発砲を聞いたためか、耳が麻痺していて良く聞き取れない。
「おい!もういいぞ!大丈夫か!?」
ぐいとグローブによって元の大きさよりも1.5倍は大きさの増した手で、アキラを抱えたままのぼくをその人は片手で引き起こした。
「外傷はないな・・・あれ?お前・・・浮英(ふえい)か?」
麻痺した耳元で大声で本名を怒鳴られる。彼も悪気があっての事では無い。こういった場合、意識があってもすぐに動けない人間が多い。そんな人間にはやはり、大声が効くのだ。
喉がカラカラに枯れていて、声が出ない。実戦がこんなに恐ろしいなんて・・・。
とりあえず頷いて肯定。この状況で返答を迷っていると最悪射殺される。
「4室は自宅待機だろ?まぁいい、運ぶぞ」
運ぶ、とは言ってもお姫様だっこをして丁重になんて事はありえない。
掴まれた右腕がそのまま横に引っ張られ、体は地面の上を滑る。一般的には引きずるとも言うかもしれない。いや言うだろう。
彼・・・・対4国管理室一室隊員佐野君は道に停まっている車の陰でようやくぼくの腕を解放してくれた。
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