最果てでもお約束。
「いらっしゃいませー」
いつも見る近くの高校に通っているバイト君がぼくを見て少しだけ微笑む。
なんせ歩いて5分の距離にあるコンビニ。今の家に引っ越してからは毎日使っている。
バイト君と少し顔馴染みにもなろうというものだ。
こっちもちょっとだけ笑って「おはよう」の気持ちだけ伝える。言葉には出さない・・・恥ずかしいから。
視線を間逆に回すと、丁度謎の旅人が雑誌の棚を難しい表情で見ていた。
「な・・・なんだ?」
すぐ側まで言って声をかける。まさか既に時遅く、何事かをバイト君に言われ・・いやこの短時間では挨拶すら間々ならないだろう・・では一体・・
「どの雑誌から読もうか」
「これ」
ぺしん、と後頭部をはたいてやる。人見知りなぼくではあるが、これから朝ごはんを食わしてやるのだ。少しくらい横柄でも許されよう。
「って、だってさー全部読んでたら時間かかるし・・・でも全部読みたいし・・・」
見かけ年齢がさらに下がった。まさか中学生ではないだろうな・・・。
「そんな事より、ちゃんと入った時にバイト君の左手を見た?」
「え?」
耳が近づいてくる。
「左手、見た?」
ちょっと声を大きくして短く伝える。
ぶるんっと顔を真正面に戻して「うんうん!」と力強く頷く。いや、もういいから離れて欲しい・・・ちゅーの距離だ・・・。
「ならいいよ。朝ごはん選ぼう」
「え!?」
また耳が口に近寄ってくる。もう一度あの気持ち悪い体験をしたくないので、おにぎりのあるコーナーを人差し指でさし、先に歩き出す。
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