最果てでもお約束。
「こうへ、動くと耳がなくなります」
「なんとっ!?」
ぼくは相変わらず防波堤に座ったまま。
アキラはというと、ニセモノっぽい髪きり鋏を持ってぼくの真後ろに立っている。
髪が鬱陶しいというぼくの髪を、アキラがどうしても切りたいと言い出したからだ。
いや、断ったんですよ?鋏がないだろーとか免許ないだろーとか。
そしたらさ、やれ鋏は旅先の優しい美容師にもらっただとかやれ免許はカリスマ美容師だって持ってなかっただのともうね・・・。
また口も利かなくなっては困るし正直寂しいので(弱者)しょうがなく、本当にしょうがなく髪を切らせてあげる事にして第一声がさっきの耳がなくなりますですよ。
びびるわ・・・。
「こうー風が気持ちいいねー」
「う・・うん・・・風でなびくのも計算に入れて切ってくれよ・・」
わはははだいじょーぶっ!とざくざく切っていくアキラ。
常識的に考えて切り過ぎのような気もする。
「こーうー」
「なんだい?」
もう髪の事はあきらめた。また伸びるだろうしな。
ある種の悟りを開いたぼくにアキラは言う。
「正直暴露大会開催しよーよ」
謎だらけの旅人がすべてを暴露!?それはかなり・・・・
「いやぁ・・・そそられないなぁ・・・別に何もないしな」
興味無し。そもそもあんまり人に興味無いんだよね。ふっ。
「そのぎゅっと握った手がすべてを物語ってますよ旦那ぁっへっへ」
主観で嘘をつくというタブーを犯そうとしたが無理でしたよ旦那ぁっへっへ(真似)
「さてーどっちから正直者になっちゃいますかー?」
「順当に行けばアキラだけどな、まぁぼくからで」
ざくざくと切っていたアキラの手が一瞬止まる。意外だったろうか?
「ふ・・・ふーん・・・い・・いいですよ?」
随分と意外だったらしい。
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