最果てでもお約束。
「あーなにから白状しようかなぁ」
アキラに隠している事・・・あるような無いような。
別段気にしていなかった。だって、なんとなく困らないような気がしたから。
隠すだの隠さないだの、気にしないでやっていけると思ったんだ。
生まれて初めて思った。誰かと繋がらなくてもいいって。
「ぼくな、本名は浮英 公(ふえい こう)って言うんだ」
「・・・・」
黙っていられると困る。何かリアクションが欲しい。後ろ髪も気になるし。
「知ってる人はな、フェイって呼ぶんだ。外人っぽいだろ?」
何回も何回も繰り返してきた自己紹介。これをする度に、人との距離を感じてきた。
これを聞くと大抵の人はちょっと間を置いて「変わってるね」とか「カッコいい」とか言うんだ。・・・・心を一歩下げてね。
「・・・・・そう」
ジョキジョキと変わらない髪を切る音。でも確かに感じた。アキラの心が少し下がる音を。
なんだよ。結局・・・お前もか。
そう思うと不思議と目に涙が溜まってきた。なんだよクソ。もう気にしないんじゃなかったのかよ。
今日の天気みたいに、心は晴れてたんじゃないのかよ。
「はは・・」
乾いた笑い声が漏れる。なっさけないなぁ・・何歳になるんだよぼくは。
ジョキンッと一際大きな音を立てて鋏の動きが止まる。
< 135 / 140 >

この作品をシェア

pagetop