最果てでもお約束。
飯につられたのか、立ち読みはあきらめ素直についてきた。
おにぎりのコーナーへはレジの真正面を通れば早いのだけれど、あえて一番遠いコースを取る。ちなみにレジから一番遠い場所にある商品はドリンクのみ。レジからは直線では見えないが、監視カメラもある。
「まずは飲み物から選ぼうか」
ドリンクが並んである冷蔵庫のドアを開けずに真正面に立つ。
「オス!ごちになります!」
肘と肘が当たる距離でぴっと冷蔵庫と正対する。素でこの距離感は・・・中々馴染めないっつーか嫌だ・・・・。
「店のBGM・・・うるさいだろ?」
「え?あぁ、うるさいねぇ。うるさすぎるほどじゃないけど、ちょっと普通の声だと聞こえにくいくらい。慣れたら案外平気かもー・・お、この曲は・・」
「わざとなんだ」
「へ?」
ノリノリだった顔がまるで急に大きな音を聞いた猫のような顔になる。
「だから・・・BGMが大きいのはわざとなんだよ、理由は後で話すからさ、ドリンク選んでるふりしときな」
「お・・おぅ・・」
ぎこちなく冷蔵庫とまた正対する。
「左手・・・見たな?どうだった?」
「なんかもぞもぞってしたな。なに、あれ。あんたも初めて話した時にしたよね」
お・・・案外洞察力はあるのかも。
「おっけ、それだけわかったらいいや。あーあー後でちゃんと話すから、これに決めた」
がこんっと冷蔵庫を開けて微炭酸ドリンクをチョイス。
「う・・・一緒のは嫌だし・・・じゃあこれ」
ひょいと身を屈め、ぼくの伸ばした腕の下に手を伸ばしお茶×炭酸というなんともアレな商品を選んだ。
「後で交換とか無しな・・・」
「これうまいのになー」
飲んだことあるんですね・・・。
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