最果てでもお約束。
「ひぇっぇぇぇぇぇぁあああああ!!」
「わははははははははははははは!!」
町を横に両断する超メジャーな道路に悲鳴と笑い声が茜色の空をバックに響き渡る。
ぼくはすでに全開立ち漕ぎで自身の自転車二人乗り最高速度記録を塗り替える勢い。
ゆうはぼくのお尻だか腰だか太股だかにへばり付いてきっと人生で初めての絶叫大会。
ぱっぱぁーん!と盛大にクラクションを上げて顔のすぐ横を車のミラーが通りすぎていく。
「と・・・とめー!」
「風でぜんっぜん聞こえないー!」
体力は無限にあるように思え、遠くに見える山をただ目指した。
風切り音が、体にあたるまだまだ冷気を感じさせる風が気持ちよかった。
この快感を、このスリルを友達になったばかりのゆうにも感じて欲しかった。
「次はもうちょっと寄せるから車の横っ腹に触ってみー?」
「なんでそっちの声はよく聞こえるんだよー!?
幼少時代のゆうは馬鹿がつくほど正直だった。
むしろ成長するにあたってどんどんひねくれていく。
えーと、ちょびっとはぼくのせいかもしれない。ちょびっとね。
今度の車は耳をつんざくクラクションは鳴らさなかった。
その代わりの音は「ギャンッ」とまるで宇宙船と光速ですれ違った時みたいで、運転に多少自信のあったぼくもちょっと漏らしそうになった。
「あばばばばっば!」
「うわはははははは!」
家から当時の年齢を思えば随分と遠くにたどり着いて、すれ違う車と言う名の凶器がヘッドライトをこうこうと付け出した頃、この人力ジェットコースターは終焉を迎えた。
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