最果てでもお約束。
「あら・・・あなたのお父さん・・・」
「はい。ちょっと町の案内をしてきます」
軽い会釈。もうあなたと話しをするつもりは無いと、目に語って。
「車に気をつけてね。親戚さんも、知らない土地なんだから色々気をつけて」
それでは、とおばちゃんも会釈。
本来行こうとした方向にお互いすれ違う。
「こうのお父さんって?土地の名士か何か?」
「いや、全然。それよりもお前・・・写メ撮られたな」
さっきのおばちゃんのメールにはきっとぼくとアキラについての情報が書かれていたはず。
「いやぁさすがに全方位をつねに観察はしていられないなぁ」
「まぁ・・・そうだけど・・・」
そもそも、今までが出来過ぎだったのかもしれない。だがそう悲観にくれることもない。さっき話したおばちゃんはきっと今頃”先程の人物に覚え有り、技術者の息子とその親戚”みたいな感じを自分の知り合い達にメール送信しているはずだ。
おばちゃんがアキラを”南”からの人間だと思っていたようには見えない。
あのおばちゃんが顔が広く、これから方々で撮られた写メを見て予想通りのメールを返信してくれれば、アキラの安全はとりあえずは確保される。
それにしても・・・
「せっかくの休みなのに面倒くさいなぁ・・」
本音が踏み出す右足と共にこぼれた。
「こうは、良い人だね」
にっこり笑顔。くっそー、昔にそんな笑顔のトラウマなんて作った事ないんだけれども・・・。
ぼくはこんな良い人間だったろうか?
”思ってる程、悪い人間じゃないだろ”