最果てでもお約束。
ぼくは靴の紐を結びなおすふりをしながら木漏れ日を見上げるアキラに言う。
「いやー・・・さすがにオレが近接キャラってとこから無理が・・」
一緒に歩いていてわかった。こいつの体力はおそらく小学生並だろうと。
この神社まで約1時間歩いたのだけれど、なんかもう肩で息してますもん。
「設定は今までと一緒。滋賀から来たぼくの親戚。血液型はA。親の名前は圭吾と恵子。うちの親は信行に美恵子。ぼくも含めてみんなAだ」
「今度はみっちり設定決めるんだねぇ」
神社を見ながら話そうとは思っていたのだけれど、こんなに早く遭遇するとは思っていなかった。
あの日本刀をぶら下げた男・・・通称”不良”はいわゆる民間パトロール。
この町に入ってきた不審人物に対する、屈強な男達の一人。
もちろん、みんなが日本刀を持って歩いている訳では無い。彼一人だ。警察に見つかればもちろん捕まってしまう。
なのにそれでもそんな物を持っているのは、彼の憎しみが物質化したようだった。
「・・・話のわからない人間じゃない」
”不良”とは言われているけれど、彼は実に誠実な人間として近所からは非常に評判が良い。無口で、寡黙で。決して人に迷惑をかけるような事はしない。
”不良”などと言われているのは、ただ単にあの日本刀を持って歩いている事に対する評価。
「ずいぶん味方してるように見えるけど・・・そろそろ日の光を見るのもつらいんですけど・・・」
「また後でな」
すっくと立ち上がってまっすぐに”不良”を見る。まだ30mは離れているのに、その瞳は交通事故のようにばっちりかち合った。
「さ、正直に行こうか」
「うそつきー」
にへへ、とアキラは彼を見て笑ったようだった。
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