最果てでもお約束。
去年よりも・・もっと。
「おいおいおい!なんか北の方が曇ってないか?」
「・・・・・ん」
まったく北の方を見ず、右手でポテトを作業的に口に運ぶ。
「いや、なんとかしろよ」
「・・・・・・」
文字を一生懸命追っていた目が伏せる。
「・・・・琴ちゃん、なんとか言って」
ぼくの向かいに座る女性に助けを求める目・・・いや、この場合は目を伏せている訳だし、なんて言うんだろう。助け舟要請?
「私としてもなんとかしてほしい・・・」
「・・・・・魔方陣書くから手伝って」
3人中2人がボケに回ってしまったからには、両方にツッこむよりは自分もボケてしまえ、と。
「うへぇ・・・雨だなこりゃあ」
「濡れるなぁ・・・」
「私車だし」
えへへ。えへへじゃねー!
「こうは彼女に送ってもらえばいいよ。彼女に」
「バイクは置いていけませんなー」
「乗せて・・・はいけないねー」
夏よりちょっと前。雨のよく降る季節。それはバイク乗りにとっては楽しくもあり憂鬱な季節。
「走り始めたら楽しいんだけど、走り始めるまでがなぁ・・」
「・・・・危ないだけだろ」
「あ!降り出した!」
ぽつり、と雨が一滴窓ガラスに当たった。
「琴・・・案外親不孝なんだな・・・」
「え。なにそれ?」
「・・・・こうはね、雨に最初に気がついた人間は親不孝だって。昔から言うんだよ。なんの根拠か知らないし、いつもオレが先に気がつくし」
「お前がぼくより親不孝だって事です」
「多分こうが鈍感なんだと思う・・・・」
「琴ちゃん・・・よくわかってるね・・・」
「あ、ポテトもーらいっ」
ゆうの目の前に積もっているポテトを一掴みして口に運ぶ。
「なんでこんなのに彼女が出来るんだろう・・・」
「う?顔だろ?」
「・・・・・・」
「顔ですかねぇ」
彼女には性格だと言ってほしかった・・・。
「ちょっと蒸すね。窓開ける?」
「いや、バーガーがしけっちまう」
「・・・・んな訳ないって・・・」
雨はだんだんとアスファルトの色を変えていった。
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