最果てでもお約束。
「その人の魂に触れてから、考えろよ」
ゆう、そう簡単に言ってくれるな。
結婚は簡単な人にとっては簡単だけれど、難しい人にとっては映画一本小説一冊できちゃう出来事なんだぜ。
日本人ぽくない苗字。これを聞いた琴の両親はどう思うだろうか。
歓迎してくれなければ、否定。
無関心の親ならば助かるのだけれど、そんな世の中のいろいろがぼくにはとても大きな壁に見えた。
この壁を、彼女にも見せていかなければならないのかと思うと、一気になんとはなく面倒になった。
何もかも捨てて、どこかに行ってしまいたくなった。
そうしてまぁ今の自分がいるのだけれど、あぁあ、失敗したなぁ。
寂しいよ、琴。
あんなにわかりあったのにね、君の世界とぼくの世界は陸続きにはならなくて、そこには二つの果てしかなかったよ。

「別れた?ふぅん」
「・・・・なんかもっとないですか」
本から目を外そうともしないゆう。
「ずーっと一人でいるつもり?」
「いやぁ、そんなそんな。子供は二人くらい欲しいしマイホームだって」
「雨、止んだな。行くか」
いつか雨の話をしたバーガーショップから、また歩き出すゆう。
「・・・・昔はぼくの後ろばっかついてきてた癖に・・・」
「びしょ濡れのシートに座るといいぞ」
「テッシュください!」

もうちょっと真面目に話しておけば良かったと、後で思った。
< 41 / 140 >

この作品をシェア

pagetop