最果てでもお約束。
「なぁこう、ちょっと聞きたいんだけど」
「あん?」
マフィアが撃ってくる様子なぞ毛ほどもない昼下がりを、ちょっと冷房の効いた店内から見ていた。
「あのさ・・・メニューにある”ライスバーガー”ってのは・・」
「・・・てめぇもか・・・」
一口もつけてなかったコーヒーに口をつける。コーヒーは季節問わずホット。ブラック。でも猫舌なのでちょっと冷まさなきゃ飲めません。
「常識で考えるとご飯で挟んだモノらしいぞ」
「ええ・・・他のさ、チキンバーガーとかは写真あるのに・・・載せるならライスバーガーを載せるべきだよね」
すでに無いポテトの袋を寂しそうに見るアキラ。
「おかげで恥ずかしい思いしたしな・・・まぁ、常識なんだろうね」
そもそも、とハンバーガーの理念について話そうとしていた時、バイブに設定していた携帯が振動。
「ん?」
自慢では無いけれど、ぼくに友達は居ない。少ない、では無く本当に居ない。顔見知りや同僚はいるけれど、友達は。
「あ、あーあ、こうは人とご飯中に携帯する人だったのか。あーあ」
むむ、確かに無作法ではある。しかしなぁ・・・食事の相手は素性も知れない旅人だしなぁ。
「いーよいーよ、どうぞー。かわりにポテトは減ると思うがいいですよ」
さっきまで旦那とか言ってた奴とは思えないな・・・。
「食いたきゃ食え。ぼくはポテトあんまり好きじゃないんだよ」
「ひへへーぃ!いただきます」
減るっつーか無くす勢いでポテトの袋はぼくの前から姿を消した。強欲の罪で裁かれるが良い。
満面の笑顔でポテトからバーガーやらオレンジジュースを食べるアキラを横目で見つつ、スライド式の携帯を覗く。
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