最果てでもお約束。
”新着メール一件”
クリック。そもそも友達の居ない自分、メールといえば迷惑メールかそれとも・・。
”5分程前南より橋で侵入者1名あり。『真睡』で対象喪失。人定は175cm線の細い男。黒髪で背広。手荷物は無し。撮影には失敗した為、見慣れない人物を見たら撮影又は捕捉願う”
やっぱりな、クソが。この侵入ってのが気に食わない。
メールの差出人は対4国入国管理室。仕事場からだ。
「どした?不幸のメール?」
そんなに険しい表情をしていただろうか?アキラが心配そうに顔を覗き込んでくる。
”どうした?”
ふいに、まったく似ていない奴の顔が浮かんだ。きっと、場所が悪いからだ。
「・・・・いや、なんでもないよ」
ぐいと覗きこんできた顔を押しやる。ちくしょう、なに思い出で安心してんだ。
ポテトに手をやるが・・・もちろんもう無かった。
パタパタパタ。テーブルに駆け寄る音。
今は平日の昼下がり。昼食の時間はちょっと過ぎた頃で、自分たち以外に客は居ない。
ならきっと、店員さんがトレイを下げに来てくれたんだろうと思った。
「えーと・・」
テーブルに目を落とす。あれ?下げてもらおうにもまだドリンクはあるしバーガーは半分しかかじってないし。無くなったのはポテトくらいなものだ。
「あの・・・こうさん」
レジで注文を聞いてくれた女の子が、どこか所在無く立っていた。
「あれ、どしたの?」
この子は昔から知っているけれど、こうやってテーブルまで話に来た事は一度も無い。
いやぼくがキモイからかもだけど・・・。
「あの・・・さっき”入管”からメールが来たんですけど・・・その・・」
「あぁ、ぼくにも来たよ。なに?不審者情報?」
就職・・・っていうか今の仕事に雇用が決まった日にも食べに来て、自分の仕事を話しているのでこの子はぼくの仕事を知っている。
「いえ、違うのは判ってるんです。5分前の入国ですし・・・でも・・その・・」
歯切れが悪い。いつも笑顔しか見てこなかったから、尚更だ。
「ん?なになに?」
話し易いようにちょっと笑顔なんて作ってみたり。ほら、この子かわいいし(既婚だけどあーんど母だけど)
「お連れの方が・・・」
「あ」
「う?」
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