最果てでもお約束。
我輩が猫なら簡単なのに。
ちなみに、ぼく達が利用した全国チェーンのバーガーショップはこの『うたた寝町』でのメインデパート『マロヤス』の敷地内にある。
駐車は全部で60台くらい。片田舎だからこそできる広大さを誇っている。
日曜の夕方には主婦達の車やら自転車やらでいっぱいになるこの駐車場に血路を見出した。
だが今は平日の昼下がり。流石に『うたた寝町の銀座』と呼ばれるマロヤスでも駐車は10台にも満たなかった。
「ま・・・丸見えじゃん!」
うん、丸見え。しかし、だからこそ良い。
一見間違ったように見えるかもしれない。そもそもさっきまで居たバーガーショップはマロヤスの敷地内でももっとも大通り寄りにある。普通の人なら、駐車場ではなく大通りに逃げ出すだろう。
でもそれは不正解。大通り・・・正確に言えば、車がまっすぐ走ってこられるような場所に逃げるのはアウトだ。やつらは・・・躊躇い無く車で轢きに来る。
軽くでも強くでも車に当てられ、地面に転がされればゲームオーバー御代は命でございます。
だからこそ、ここ。微妙に車(障害物)が有り、車から降りて走って追いつけると思わせなければ。
ばんばんばんっと車のドアが閉まる音×3。これで追っ手が恐らくは3人以上だと想像。
タイムロスになるからやりたくないけれど、追っ手の外見だけでも知っていなければ後で困る。
ちらりと車の方を見ると、丁度男達が車から降りた所で話し合っていた。
スキンヘッドのヒップホッパーが一人。キャップを被ったのが一人。ベースボールシャツを着たのが一人。計3人。と、運転席には恐らくまだ一人乗ったまま。
ついでに餌も撒いておく。
「体力無いんだから急げ!」
出来るだけ大声でアキラに・・・というよりはその後ろで話し合っている男達に向けて。
「ひえぇ・・ばらさなくても」
すでにアキラの額には小さな汗。体力が無いのは本当だったらしい。
「店内で撒くぞ!」
今度はマロヤスを向いて大声で叫ぶ。
「ら・・・らじゃー」
横までがんばって並び、ぐっと親指を立てて見せるアキラ。阿呆・・・お前がひっかかってどうする・・。
今度は本当に時間の無駄になるので、振り返らない。
けれど恐らくゲーム感覚の奴等は思っただろう。
”体力が無いからあまり走れず、あの店内でなんとか撒くつもりだ”と。
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